2017.01.23 Monday

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    2015.10.04 Sunday

    エピソード18/女三人集まれば

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      絵美が俊之の部屋で目を覚ます。

      俊之はすでに居なかった。

      時間を確認したら、朝の七時を過ぎている。

      俊之達はもう、釣りを始めている頃だろう。

      絵美はとても寂しく思ったが、現実として目の前に俊之は居ない。

      仕方がないので、観念して服を着替えた。

      絵美は俊之の部屋を出て、一階に降りる。

      台所に俊之の母が居た。

      絵美「おはようございます」

      俊之の母「あら、おはよう。朝ご飯、食べるでしょ!?」

      絵美「はい。頂きます」

      俊之の母「今日はサンドイッチだけど、いいよね!?」

      俊之の母はそう言いながら、一皿のサンドイッチを絵美の前に出す。

      絵美「はい。俊君はもう、出掛けちゃったんですか?」

      訊くまでもない事だが、訊いてしまう。

      俊之の母「私が起きた時には、もう出ちゃっていたみたいだからねぇ」

      絵美「俊君、起こしてくれないんだもんなー」

      俊之の母「起こして欲しかったの?」

      絵美「正直、分からないんです」

      俊之の母「ふふふ」

      絵美「ちょっと先に顔を洗ってきます」

      俊之の母「いってらっしゃい」

      絵美は洗面所へ行った。

      すると、丁度、回っていた洗濯機が止まる。

      絵美は顔を洗って、手グシで髪を整えた。

      そして再び台所に戻って椅子に座る。

      俊之の母「牛乳、飲む?」

      絵美「はい。頂きます」

      俊之の母はコップに牛乳を注いで、絵美の前に置く。

      そして牛乳パックを冷蔵庫へ戻した。

      絵美「あの、さっき、洗面所で洗濯機が止まったみたいですけど」

      俊之の母「ありがとう。教えてくれて」

      絵美「それじゃ、頂きます」

      俊之の母「どうぞ」

      絵美は先ず、牛乳を半分程、飲んだ。

      そしてサンドイッチを食べ始める。

      俊之の母が台所から出て行く。

      洗濯機の所へ行った様だ。

      絵美はサンドイッチを食べ終わる。

      俊之の母はまだ帰って来ない。

      恐らく、洗濯物を干しに行ったのであろう。

      絵美は俊之の母が台所に戻って来るのを待った。

      暫くすると、俊之の母が台所に戻って来る。

      絵美「私、一度、帰りますね」

      俊之の母「そう、ね。また、後でね」

      そして絵美は勝手口から外へ出て、自分の自転車で自宅へ帰る。

      俊之の母は掃除を始めた。

      今日は昼から、絵美と絵美の母が家に来て、三人でお菓子作りをする予定だ。

      だから、それまでに家事を済ませなければならない。

      そして、それは絵美の家も同様であろう。

      正午を過ぎた頃、絵美が母を伴って、俊之の家にやって来る。

      絵美と絵美の母は、お菓子と夕飯の食材を持ってきていた。

      勿論、俊之の家にも幾らかの食材はある。

      両家にあった食材で、お菓子と夕飯を作る予定だった。

      三人は先ず、俊之の母が用意をしていた素麺で昼食を摂る。

      絵美の母「山ノ井さん、俊之君を本当にしっかりしたお子さんにお育てになられて」

      俊之の母「いえいえ。まだまだ、そんなに褒められる程のものじゃありませんよ」

      絵美の母「私はもう、可笑しくなるくらいの、しっかり者だと思うくらいですけどね」

      俊之の母「あら、やだわ。可笑しくなるくらいって、一体、何をやらかしたんでしょう!?あの子ったら」

      絵美の母「色々な物事に対して、しっかりとした自分の考えを持っていて、こんな事を言ったら、失礼になるのかもしれないけど」

      俊之の母「失礼だなんて。何でもおっしゃって下さいな」

      絵美の母「とても高校生とは思えないくらい、しっかりしたお子さんだと思いますわ」

      俊之の母「申し訳ありません。こちらの方が何か失礼があったんじゃないでしょうか!?」

      絵美の母「失礼だなんて、とんでもごさいません。寧ろ、感謝をしているくらいですわ」

      俊之の母「そう言って頂けると、とても助かります。でも、私からしたら、まだまだ子供で、そんなにしっかりしているなんて、とても思えませんわ」

      絵美の母「それを言ってしまったら、ウチの絵美の方が、まだまだ子供で、山ノ井さんにはご迷惑をお掛けしているんじゃないかと」

      絵美「お母さん、何を言っているのよ」

      俊之の母「いえいえ、絵美ちゃんには、いつも助けて頂いちゃって、私の方こそ、とても感謝をさせて頂いていますわ」

      絵美の母「そう言って頂けると、私の方もとても助かりますわ」

      俊之の母「ねー、絵美ちゃん」

      絵美「私は俊君も俊君のお母さんも忙しそうだから、私に出来る事で、少しでもお手伝いが出来ればいいかなって」

      俊之の母「本当に私は助けられてばかりで、いい娘さんをお育てになられたのは川村さんの方じゃないですか」

      絵美の母「あら、やだ。絵美の事を褒めて頂けるなんて。初めての経験だわ」

      絵美「お母さんったら、もう〜」

      俊之の母「俊之のお嫁さんになって頂戴ね」

      絵美「はい」

      絵美は少し照れながら、そう応えた。

      俊之の母「絵美ちゃんに俊之のお嫁さんになって貰わないと、私、困っちゃうわ」

      絵美の母「ウチの方こそ、俊之君に絵美を貰って頂かないと困ってしまうわ」

      当人の絵美を余所に、二人の母親が笑っている。

      そして、いつの間にか、ボウルに入っていた素麺が無くなっていた。

      俊之の母「お素麺、無くなっちゃったわね。もう少し、茹でましょうか!?」

      絵美の母「いえ、お構いなく。どうせ、これから、お菓子を作って食べるんですから」

      俊之の母「それも、そうね」

      絵美の母「それじゃ、そろそろ始めましょうか」

      俊之の母「そうですね。もたもたしていると男共が帰って来ちゃうわね」

      三人は立ち上がって、食器を片付け始める。

      俊之の母「絵美ちゃん。洗い物、頼むわね」

      絵美「はい」

      そう言うと、絵美は流しに置かれた食器を洗い始める。

      俊之の母「それじゃ、私は南瓜のケーキを作らせて頂くわ」

      そう言いながら、俊之の母は南瓜に包丁を入れた。

      絵美の母「私はちょっと変わった林檎のおやつを作るわね」

      そう言いながら、絵美の母は包丁で林檎の皮を剥いていく。

      俊之の母が適度に切った南瓜を電子レンジで加熱をする。

      洗い物を終えた、絵美が言う。

      絵美「それじゃ、私はゼリーを作ります」

      俊之の母「お願いね」

      絵美が鍋に粉寒天と水を入れて火にかける。

      俊之の母が加熱をした南瓜に牛乳と砂糖を加えて、ミキサーを回した。

      絵美の母が皮を剥いて適度に切った林檎を鍋に入れて、レモン汁、砂糖、バターを加え、空いているコンロを使って弱火で煮込む。

      俊之の母「暑いわね〜」

      絵美の母「そりゃ、この時期に屋内で三人が同時にお菓子を作っていたら、暑くもなるわよ」

      俊之の母がミキサーに溶かしたバターと卵と小麦粉を加えて、再度、ミキサーを回す。

      絵美は自分が担当をしている方の鍋の火を止めて、蜂蜜とレモン汁を入れて、かき混ぜる。

      絵美の母は自分が担当をしている方の鍋の様子を見ていた。

      絵美は自分が担当をしている鍋の中のものを器に流し込み、テーブルに置いて熱を冷ます。

      そして手の空いた絵美が他の二人に声を掛ける。

      絵美「何か手伝いましょうか?」

      絵美の母「あんたは餃子を包んで頂戴」

      俊之の母「絵美ちゃん。此処だと狭いから、リビングでお願いを出来るかな」

      絵美「分かりました」

      絵美は下拵えを済ませて持ってきた餃子の具と、餃子の皮を三分の二程度持って、リビングへと行った。

      俊之の母がミキサーから具をボウルに流し込む。

      そして再び、加熱をした南瓜に牛乳と砂糖を加えて、ミキサーを回す。

      因みに、この後、俊之の母は何度か、この工程を繰り返す事になる。

      絵美の母は自分の所の鍋の火を止めた。

      絵美の母「こっちは、ちょっと冷まさないと。山ノ井さん、それは、どうすればいいのかしら?」

      俊之の母「30分程、オーブンで焼くんだけど、その前にオーブンを温めないと」

      俊之の母はそう言いながら、オーブンの所まで行って、オーブンのスイッチを入れた。

      そして再び、ミキサーの所へ戻って来て、先程と同じ工程を繰り返す。

      絵美の母「それじゃ、私は夕飯の下拵えをしておきますね」

      俊之の母「お願いします」

      オーブンが温まると、俊之の母は南瓜のケーキを一つ、オーブンに入れて焼き始める。

      絵美の母は夕飯の下拵えをキリのいいところで切り上げて、先程、煮込んで冷ましておいた、林檎のおやつの具を餃子の皮で一つずつ、包んでいく。

      絵美が台所に一度、戻って来て、ゼリーの入った器を冷蔵庫へ入れる。

      そして再び、リビングへ行って餃子を包み始めた。

      絵美の母は林檎のおやつの具を包み終えると、油の入った鍋を火にかける。

      俊之の母が人数分の南瓜のケーキの素を作り終えた。

      そして一つ目のケーキの焼き具合を確かめる。

      十分に焼けていた様で、すぐにオーブンから一つ目のケーキを出して、続けて二つ目のケーキをオーブンに入れて焼く。

      俊之の母「川村さん、私も手伝いましょうか?」

      絵美の母「いえ。もう後は油で揚げるだけだから」

      俊之の母「それじゃ、絵美ちゃんの方を手伝おうかしら」

      そう言いながら、俊之の母はリビングへ向かった。

      俊之の母「絵美ちゃん。私も包むよ」

      絵美「いえ、もうすぐ終わっちゃいます」

      俊之の母「あら、そうなの。じゃあ、私はちょっと、休憩をさせて頂こうかしら」

      そう言いながら、俊之の母は絵美を見て左の側に座った。

      絵美「どうぞ、どうぞ。私も終わり〜。だから、私も休憩〜」

      絵美の母は台所で林檎のおやつを揚げている。

      俊之の母「絵美ちゃん、餃子を包むの上手だね」

      絵美「お母さんに鍛えられたから」

      俊之の母「男共はちゃんと、釣れているのかしらね」

      絵美「お父さんはいつも、何かしら釣ってくるけど」

      俊之の母「そうなんだ。じゃあ、名人なのかしら!?」

      絵美「名人かどうかまでは判らないけど」

      俊之の母「そういえば、そうね。絵美ちゃん、女の子だもんね」

      絵美「お母さん、私の事を何だと思っていたんですか!?」

      俊之の母「あはは。ごめん、ごめん」

      絵美の母「お待たせ〜」

      そう言いながら、絵美の母が林檎のおやつを盛った皿を持って、リビングにやって来た。

      俊之の母「あら、美味しそう〜」

      絵美の母「でも、まだ熱いから。もう少し冷まさないと、火傷をしちゃうわ」

      そう言いながら、絵美の母は林檎のおやつを盛った皿をテーブルに置いて、絵美を見て右の側に座った。

      俊之の母「本当に面白いお菓子だわ」

      絵美「味も美味しいんですよ〜」

      俊之の母「そうなの!?楽しみだわ〜」

      絵美の母「南瓜のケーキも、とても美味しそうだけど」

      俊之の母「期待をして頂いて構わないわ。自信はあるわよ」

      絵美「早く食べたいな〜」

      俊之の母「でも、時間がかかるのが難点ね」

      絵美の母「一つ、焼き終わったの、あったわよね!?」

      俊之の母「一つだけ、ですけど」

      絵美の母「だったら、それを三等分にして、先に食べてみない!?」

      俊之の母「そうね。それも、いいわね」

      絵美「じゃあ、私が持って来るね」

      そう言うと、絵美は立ち上がって台所へ行き、焼き上がった南瓜のケーキと包丁を持って、リビングに戻って来る。

      俊之の母が絵美から包丁を受け取って、南瓜のケーキを三等分にした。

      そして三人はそれぞれ、手で南瓜のケーキを口に運ぶ。

      絵美の母「本当に美味しいわ」

      絵美「うん。すごく美味しい〜」

      俊之の母「上出来だわ」

      絵美「お母さん、今度、私に教えて下さいね」

      俊之の母「いいわよ。それじゃ、今度は林檎の方を食べてみましょう」

      そう言いながら、俊之の母が林檎のおやつに手を伸ばした。

      絵美と絵美の母も同様に林檎のおやつを手を取り、三人で食べ始める。

      俊之の母「あら、これも、とても美味しいわ」

      絵美「このおやつ、私、大好きなんだ」

      俊之の母「川村さん、このお菓子、何処で覚えてきたんですか?」

      絵美の母「へへぇ。私が考えたのよ」

      俊之の母「すごいわ〜」

      絵美の母「主婦の知恵って奴ね」

      三人は次々と林檎のおやつを平らげていく。

      あっという間に林檎のおやつは無くなってしまう。

      そして三人は他愛のない話を延々と続けていく。

      途中、絵美の母と俊之の母が、夕飯の下拵えの続きや、残りの南瓜のケーキを焼く為に席を外す。

      こうして、絵美にとっての、夏休み最後の日曜日の午後が過ぎていくのだった。