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    2016.04.06 Wednesday

    エピソード68/思い出のない思い出

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      俊之と絵美は見知らぬ公園に来ている。

       

      修学旅行の自由時間になり、二人は班を抜け出して此処へ来た。

       

      最初にハウステンボスに行く予定になっていたが、すぐに行くと、みんなと一緒になってしまうので、少し時間をずらす為と予定を確認する為に、この公園へ立ち寄ったのである。

       

      そして二人は公園にあったベンチに腰をかけた。

       

      心地良い風が吹いている。

       

      天気もいい。

       

      絵美が俊之の肩に寄りかかる。

       

      俊之が絵美の顔を覗き込む。

       

      絵美は目を閉じて気持ち良さそうな感じだった。

       

      俊之はそんな絵美の表情が、たまらなく可愛く感じて、軽くキスをする。

       

      しかし絵美からは何の反応もない。

       

      ただただ、気持ち良さそうにしていた。

       

      予定の確認をしようと思っていたのだが、そんな絵美の顔を見ると、予定の事など、どうでもよくなってくる。

       

      そして俊之も目を閉じた。

       

      そのまま、どれくらいの時間が経ったのだろうか。

       

      二人は微動だにせず、そこに、そのまま居た。

       

      俊之も絵美も眠っている訳ではない様である。

       

      しかし二人は話をする訳でもなく、動こうとすらしない。

       

      俊之も絵美も、すでに自由時間の事など、頭の中になかった。

       

      ただただ、このまま動きたくなかったのだ。

       

      そして、そのまま、ただ時間が過ぎていく。

       

      本来なら、ハウステンボスで昼食を摂っていても、おかしくはない時間である。

       

      普通なら腹も空いてくるだろう。

       

      しかし今日は不思議な事に腹も空かなかった。

       

      本当に心地良かった。

       

      ただ、それだけだった。

       

      そして、また時間だけが過ぎていく。

       

      日も傾き始めて、俊之達の座ったベンチが木陰に飲み込まれる。

       

      日陰に入ると、少し肌寒く感じた。

       

      そして俊之が目を開けて、時間を確認する。

       

      時刻は午後3時を過ぎたばかりだった。

       

      結局、二人は5時間程、此処で、ただボーっとしていた事になる。

       

      そして俊之が絵美に話しかける。

       

      俊之「起きている!?」

       

      絵美「うん。大丈夫だよ」

       

      俊之「もう何処かへ行っている時間がなくなっちゃったよ」

       

      絵美「そうなんだ」

       

      俊之「もう少ししたら、集合場所へ向かわないと」

       

      絵美「そっか」

       

      絵美はまだ俊之の肩に寄りかかって目を閉じている。

       

      俊之「可愛いな」

       

      俊之がそう呟いた途端、絵美も目を開けて俊之に顔を向けた。

       

      絵美「俊君、さっき私にキスをしたでしょ」

       

      俊之「さっきって、いつの話をしてんだよ」

       

      絵美「さっきって言ったら、さっきだよ」

       

      俊之「もう5時間くらい前だぜ」

       

      絵美「え!?そうなの!?」

       

      俊之「だから、もう集合場所へ向かわないといけないって」

       

      絵美「じゃあ、行こっか」

       

      俊之「うん」

       

      二人はベンチから立ち上がって歩き始める。

       

      絵美「何の思い出も作れなかったねー」

       

      俊之「そうだな。思い出を作れなかった事が思い出かな」

       

      絵美「あはは。本当にそうだね。せっかくの予定が無駄になっちゃったね」

       

      俊之「結局、ハウステンボスも行かなかったもんな」

       

      絵美「何で起こしてくれなかったの?」

       

      俊之「絵美は眠っていたの?」

       

      絵美「眠ってはいなかったけど、なんか、すごく気持ち良くてさー」

       

      俊之「だから」

       

      絵美「だから!?」

       

      俊之「絵美がとても気持ち良さそうにしていたの見ていたら、俺も気持ち良くなってきて、もう、このままでいいやって」

       

      絵美「そうなんだ」

       

      俊之「起こされてでもハウステンボスへ行きたかった?」

       

      絵美「う〜ん。ハウステンボスは行ってみたかったけど、もう、いいや」

       

      俊之「そっか。起こせば良かったかな」

       

      絵美「ん〜ん。私、すごく気持ち良くて幸せだったし」

       

      俊之「そんじゃ、ハウステンボスはその内、また別の機会に二人で行こうな」

       

      絵美「本当!?」

       

      俊之「いつになるかは分かんないけどさ」

       

      絵美「うん」

       

      そして二人は公園を出て、集合場所へと向かう。

       

      傾き始めた日の光が、そんな二人を優しく包んでいた。

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